性感染症Sexually transmitted disease
性感染症Sexually transmitted disease
おしっこが痛い、ムズムズする、ウミが出る、などの症状が出たときは尿道炎かもしれません。男性尿道炎には淋菌性、クラミジア性、非淋菌非クラミジア性があります。
「淋病」とは淋菌(Neisseria gonorrhoea)感染症のことをさしますが、一般的にはドロドロとした黄色い(膿性な)ウミを伴う尿道炎のことをいいます。治療には即効性のある注射薬が必要です。最近は、ロセフィン、トロビシン、ニトロフラントイン、ホスホマイシンなどの注射薬が多く使用されています。
典型的なクラミジア性尿道炎の場合、尿道から透明〜若干白く濁った程度の水っぽい分泌物が見られます。淋病と比べると「鼻水」のようにさらさらしていることから漿液性分泌物と呼んでいます。自覚症状はほとんど気づかない程度の軽いものから、おしっこするのが怖いほど痛くてたまらないものまで様々です。感染して数日で自覚症状が消えてしまうこともあるので、感染したことに気づかない人(無症候性感染者)が半数以上に及びます。
クラミジアは、大変ユニークな細菌学的特性を持つために、分離培養が困難で、一般的な細菌と異なり感受性試験等で薬剤の効果を評価することは難しいため、しばしば見逃されたり不十分な治療によって感染が遷延化して重大な健康被害をもたらす一因になっています。
ジスロマックは、2000mgの超大量を1回だけ飲めば約90%の感染が治るとされており、海外ではほとんどの症例で使われており,日本でもよく使われるようになりました。ただし、ジスロマックは連鎖球菌や腸球菌、マイコプラズマの一部に耐性を持つものがあり、年々その割合が増えていて、海外ではジスロマック一辺倒の治療を見直す意見も出てきています。当院ではもちろんジスロマックやグレースビットによる治療をしています。
疲れたとき、生理前後、寝不足、ストレスが溜まったときなどに性器ちかくの水泡・腫れ・痛み・かゆみが繰り返しおこる。こんなときは、性器ヘルペスのウイルス(HSV)が考えられます。性器ヘルペスのウイルス(HSV)は一度感染してしまうと皮膚の神経をさかのぼり、体の奥に潜んでしまい、寝不足、ストレス、飲み過ぎ、風邪、女性では生理など、体の抵抗力が下がったときに再発します。最近は治療薬の進歩で、きちんと治療すれば、昔ほど怖がる病気ではなくなりました。症状の強さに関係なく、性器ヘルペスは神経のウイルス感染症ですから、塗り薬は症状を緩和したり、皮膚の保護をするだけで、根本的な治療ではありません。内服治療が基本です。出された薬は症状が無くなっても全部きちんと飲みましょう。次の再発のために取っておくことは、自覚症状だけをごまかすので、パートナーに移しやすくしてしまいます。
性器周辺にイボができたら尖圭コンジローマかもしれません。尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症です。イボは1mm以下のものから、性器全体に広がるものまで様々で、その数や形によって治療のし方が変わります。単なるイボとしてではなく、ウイルス感染症と考えないと再発を繰り返してしまうので、ウイルス免疫を作るベセルナリームをお勧めすることが多いのですが、症状によって電気凝固法や液体窒素療法を選んでいます。
尖圭コンジローマはヒトパピローマウィルス(HPV)が粘膜や皮膚の細胞を異常に増殖させて起こる良性腫瘍ですから、ほかのウィルス感染症と同じようにウィルス(または坑ウィルス抗体)を証明できれば感染の診断ができるはずです。しかし、ヒトパピローマウィルスは粘膜細胞や皮膚基底細胞といった場所にあるので、体の免疫細胞に認識されにくく、血中抗体でウィルスの存在を調べることが難しいのです。また、ウィルスが感染しても尖圭コンジローマを発病するのは約3%のひとで、大多数のひとはウイルスに感染しても発病しません。女性では子宮頚管部の粘膜をスポンジでこすって細胞を採取してウィルスを調べることが可能ですが、男性では皮膚の表面をいくらこすってもウィルスを捕まえることができず、無症状のひとを検査することは、事実上不可能です。性病はパートナーとの同時治療が原則ですが、尖圭コンジローマに関しては発病していないひとの治療はできませんので、パートナーをお連れいただいても男性では肉眼で尖圭コンジローマローマの有無を確認することぐらいしかできません。一方、女性では発病していなくてもウィルスの検査が可能ですが、健康保険が適用されない検査で、事前準備も必要ですので、あらかじめ医療機関に検査が可能かどうかということと、料金がいくらぐらいかかるかということを問い合わせてください。ウイルスに感染していない場合なら、子宮頸がんや尖圭コンジローマの予防ワクチン接種をお勧めいたします。
何も症状がなくても男性なら泌尿器科を、女性なら婦人科を受診されることをお勧めいたします。ウィルス感染が明らかになった場合は、性行為のときにできるだけコンドームを使うように心がけ、無症状でも定期的(最低でも1年おき)に検診を受けていただくようお勧めいたします。