腎腫瘍とは
腎臓にできる腫瘍の中で、その約90%は悪性腫瘍の腎がん(腎細胞がん)でこれは、尿をつくる尿細管細胞から発生します。50歳以降の中高年者に多く認めら、30歳以下の若年者にも発生することがあります。男女比は2~3:1、男性に多く認められます。発生原因ははっきりしていないところも多いですが、喫煙、性ホルモン等はリスクファクターとして考えられています。
症状について
3大症状は、血尿、疼痛、腹部腫瘤とされています。しかしその3大症状が揃うことは多くありません。
早期がんでは、自覚症状を認めず、検診や人間ドッグなどの超音波検査で偶然見つかることも多いです。このような段階で見つかった場合は転移がみられることはまれです。
診断方法
腎細胞癌の診断は、主に造影CT検査で行いますが、診断が困難な場合は、血液検査、MRI検査などを併用することがあります。
さらに、下の写真に示すように、個々の患者さんによって、発見された時の腫瘍の大きさは異なり、全身状態や転移の状況を考慮した上で、その患者さんに最適な治療法を検討しています。
当科初診時における右腎細胞癌のCT画像
腎にできる病変のうち、腎がんと区別しなければならないものとして、腎嚢胞と良性腫瘍の腎血管筋脂肪腫などがあります。
治療について
受診からの流れとしては、まず外来で検査を受けていただきます。
胸部レントゲン検査、腹部CT検査は必須の検査になります。MRI検査、核医学検査、血管造影検査等は腫瘍の状態により施行する場合があります。
1. 手術療法
腎細胞癌の治療法として、最も有効なのは手術療法と考えられています。
手術は、患者さんの全身状態と、術前の画像所見における腫瘍自体の大きさなどを考慮して行います。
手術は、腫瘍のみを切除する腎部分切除術と、腎臓全体を切除する腎摘除術とに分けられますが、腎部分切除術は、腫瘍の大きさと腎臓における局在部位をみて、適応があるか検討しています。
2. 腫瘍血管塞栓治療
腫瘍が大きく、切除が困難な場合、切除前に腫瘍に血流を送っている血管を閉塞することで、腫瘍を縮小し、切除が可能になることがあります。また、全身状態が悪く、手術をすることができない患者さんに対しても、他治療と併用することで、症状の改善や、一定の治療効果を得ることができます。当科では、放射線科医師と連携し、本治療を行っています。
治療前後のCT画像
3. 分子標的治療
近年、腎細胞癌の治療薬は進歩し、これまでの免疫療法に抵抗性のあった患者さんにも有効とされる分子標的治療薬が、本邦でも使用されるようになりました。当科では、他施設との情報交換や共同研究を通じ、個々の患者さんに合わせた、より安全で、効果的な使用方法で治療を行っています。
4. 免疫療法
手術が不可能な症例、および転移を認める症例に対して免疫療法を行ないます。インターフェロン、インターロイキン等の薬を使用します。
奏功率は20%以下ですが、症例によって効果のあるものもあります。
5. 放射線療法
通常、腎がんは放射線治療に効果がありません。ただし、骨転移病巣に対して、疼痛コントロール目的で行なう場合があります。
6. 化学療法
残念ですが、現時点では腎がんに対して有効な抗がん剤はほとんどありません。世界では、免疫療と併用し効果を高めようとする試みが行なわれています。
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