前立腺肥大症の症状
これから5つの質問を、特に50歳以上の男性にさせて頂きます。
1) 夜中にトイレに2回以上通いますか。
2) 便器の前に立ってから尿が出るまでに時間がかかりますか。
3) 小便が出終わるまで若い頃より時間がかかりますか。
4) 小便する時にお腹に力をいれますか。
5) 小便の勢いは若い時と比べて弱いですか。
質問に3つ以上ハイと答えた方はこの先もじっくりお読みください。また、2つ以上の方も将来の事を考え、じっくりお読みください。また、女性の方には直接関係無くて申し訳ないのですが、身の回りにこういう方がいらっしゃらないかと思って読んでみて下さい。
私たちは普段、尿がたまると尿意を感じ、そしてある程度我慢ができ、自分の都合にあわせて排尿し、そして一瞬の爽快感を味わい、そのことを特別意識することはありません。しかし、50歳以上の男性の中には、次のような経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
例えば駅などの公衆トイレで、隣はどんどん交代するのに自分の後ろには人が並んでしまう。あるいは、バス旅行などでトイレ休憩まで我慢できない。
最初に書いた質問の内容や、こういった経験をお持ちの方。これが「前立腺肥大症」や「前立腺癌」の代表的症状です。
症状の程度を表す指標として、国際前立腺症状スコアというアンケートが広く用いられています(表1)。
合計点数が8点以上の方は一度泌尿器科の受診をお勧めします。
国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score:IPSS)
IPSS |
なし |
5回に 1回 未満 |
2回に 1回 未満 |
2回に 1回 |
2回に 1回 以上 |
殆ど いつも |
(1) |
過去1ヶ月間、排尿後にまだ尿が残っている感じがありましたか? |
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
(2) |
過去1ヶ月間、排尿後2時間以内にもう一度行かねばならないことがありましたか? |
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
(3) |
過去1ヶ月間、排尿途中に尿がとぎれることがありましたか? |
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
(4) |
過去1ヶ月間、排尿を我慢するのがつらいことがありましたか? |
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
(5) |
過去1ヶ月間、尿の勢いが弱いことがありましたか? |
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
(6) |
過去1ヶ月間、排尿開始時にいきむ必要がありましたか? |
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
(7) |
過去1ヶ月間、床についてから朝起きるまで普通何回排尿に起きましたか? |
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
IPSS 合計 点
合計点数:0~7;軽症、8~19;中等症、20~35;重傷
前立腺肥大症とは
前立腺とは、膀胱の出口に男性だけに存在する臓器で、正常ではクルミ大の大きさですが、40~50歳位から次第に大きくなり、中を通っている尿道を圧迫します。
原因は加齢に伴うホルモンのアンバランスと言われていますが、まだはっきりしたことはわかりません。
治療は、初期にはいろいろな薬物療法を試してみますが、進んだものでは手術療法が主となります。手術には開腹手術と内視鏡手術がありますが当院泌尿器科では、前立腺の大きさにかかわらず、全ての方にお腹を切らずに内視鏡で前立腺を削る「経尿道的前立腺切除」を実施しています。この手術の利点は、1)お腹を切らないので術後が楽である。2)高齢者や、心臓病、糖尿病などの合併症のある方も比較的安全に受けられる。3)入院期間が短い、などです。
歳をとったから尿が出にくいのは当たり前、というのは間違いです。また長く放って置くと、膀胱や腎臓も悪くしてしまいます。尿が出にくいうっとうしさから開放され、快適な生活が送れるよう、ご心配な方は一度泌尿器科へご相談にいらして下さい。
診断に必要な検査
基本的には下記の5項目で診断します。すべて外来で施行可能です。
1. 問診
排尿についての自覚症状を所定の用紙に記入してもらいます。
2. 前立腺触診
肛門から直腸診を行います。
3. 血液尿検査
前立腺癌との鑑別のためにPSAという腫瘍マーカーを採血します。
腎機能や尿所見に異常がないかも確認します。
4. 尿流測定
尿の勢いをみる検査とともに残尿がないかを確認します。
残尿量は専用の超音波装置を使うので全く痛みはありません。
5. 経直腸的超音波検査
肛門から専用の超音波装置を使用して前立腺の大きさや前立腺癌の心配がないかをみます。
治療方法について
前立腺肥大症はQOL(生活の質)の疾患といわれています。ですから前立腺肥大があっても排尿状態に不便を感じていなければ治療の必要はありません。上記の検査をしたうえで治療が必要かどうかを判断します。治療法には内服治療と手術があります。手術が必要と判断された場合には下記のような各種治療法がありますので、患者さん毎に最も適切な治療法をお勧めしています。
1. 経尿道的前立腺高温度療法(TUMT)
尿道にカテーテルを挿入したのちマイクロ波を用いて前立腺を暖める治療法です。
外来治療で可能ですが大きな前立腺には向きません。大体30g以下の比較的小さい前立腺肥大によい治療です。ただし1~3年で症状が再発してしまいます。
2. 経尿道的前立腺切除術(TURP)
内視鏡を使って電気メスで前立腺を切除します。5~7日間程の入院が必要です。
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