尿失禁Incontinence

腹圧性尿失禁とは

尿失禁は、病名ではなく症候名であり、本人の意思とは関係なく尿を漏らしたり、排尿をしてしまう状態をいいます。これまで尿失禁は、致命的疾患でないことや患者の羞恥心から軽視される傾向にありました。しかし、近年、患者のQOLの重要性が認識され、また患者自身の認識も高まり、高齢化社会の到来と相まって、今や医療上大きな問題となっています。
腹圧性尿失禁は腹部に力が入った時に、すなわち、膀胱に尿が貯留した時のくしゃみ、重いものを持ち上げるとき、階段の昇降、大笑いやテニス、ジョギングなどの運動など瞬間的に腹圧がかかることにより膀胱内圧が尿道閉鎖圧を上回り、尿失禁を起こします。腹圧性尿失禁はほとんど女性に見られます。これは女性には前立腺が無く尿道が短いためです。また女性は骨盤底筋群を尿道、膣、直腸が貫いており、出産、肥満、加齢などにより骨盤底筋群が緩みやすいため膀胱、尿道が後下方に下がった状態になりやすいのです。

診断方法

1. 尿漏出の確認

膀胱に尿がたまった状態で強い努責(ジャンプ、咳など)をくわえて漏れを確認する。
パッドを股間にあてもれた量を測定します。

2. 尿流動態検査

尿流測定

排尿障害の病態を理解し、排尿量の減少や尿流率の低下、排尿時間の延長や尿流曲線のパターンの変化を認めます。

膀胱内圧測定

膀胱に水もしくは炭酸ガスを徐々に注入し、その内圧を測定します。無抑制収縮や膀胱のコンプライアンス―膀胱の固さなど、尿をためる能力―を調べることにより失禁の診断に役立ちます。

尿道内圧測定

尿道内の静止時の圧分布を調べるもので、腹圧性尿失禁では尿道閉鎖圧の低下や機能的尿道長の短縮を認めます。

外尿道括約筋筋電図

膀胱内圧測定と同時に行われ神経因性膀胱に見られる排尿筋括約筋協調不全の診断をします。

3. 膀胱造影

膀胱瘤、膀胱下垂の有無を診るためで、尿道にチェーンを挿入し膀胱後壁と尿道とのなす角を測定します。腹圧性尿失禁では広がっている事が多いです。

治療について

1. 保存的治療

骨盤低筋体操(尿失禁体操)
ゲーゲル方と呼ばれ尿道括約筋と骨盤低筋の緊張を改善させ、尿道閉鎖圧と骨盤内臓器支持力を高めて尿失禁を治すものです。
体操の図を載せました。参考にしてください。

薬物療法

薬物療法は中心的に施行されている治療法で失禁のタイプにより用いる薬物が異なってきます。
大まかには過活動性膀胱では排尿筋の収縮を抑える抗コリン剤を用い、尿路閉塞に伴うものは
α1ブロッカー(尿道にあり尿道を閉める働きのある。交換神経末端(α受容体)をブロックする。)を用います。

2. 手術療法

各々の病態に応じて数多くの術式が知られていますが、当泌尿器科では主にテープを用いた膀胱頚部吊り上げ術(Tension-free vagimal tape)TVTを短期入院手術で行なっています。

1) 膀胱頚部吊り上げ術
2) スリング術
3) TVT手術 あるいはTOT手術
4)コラーゲンの 尿道周囲注入術

などがあります。

泌尿器科他症状は以下からご覧ください

お問い合わせ:042-649-1528

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