膀胱がん・膀胱炎Bladder cancer,Cystitis

膀胱腫瘍とは

膀胱腫瘍は良性のものが少なく、ほとんどが悪性腫瘍、つまり膀胱がんということになります。
日本の膀胱がんは、死亡数でみると、男性では悪性腫瘍の第11位、女性では第14位とそれ程多くはありませんが、毎年8000-9000人が発症しているといわれています。がん研究振興財団の統計1)によれば、平成11年度の膀胱がんによる死亡総数は4781人で、がん全体の1.65%です。そのうち男性は3,296人、女性は1,485人で、人口10万人対ではそれぞれ5.4人および2.3人です。患者調査によると、日本における膀胱がんの総患者数は約2万人と推計されています。
女性にくらべ男性に多く、年齢は70歳台がもっとも多いといわれています。

膀胱がんの原因とは?

膀胱がんの原因としては、現在のところ、喫煙が危険因子として知られており、男性における喫煙者のリスクは、非喫煙者に比較して4倍といわれています。
特殊なものとしては、職業性膀胱がんがあり、1985年にドイツのRehnが、染料工場に勤務する4人に膀胱がんが発生したことから、特定の化学物質(アニリン)の慢性暴露によって膀胱がんが発生することを報告しました。本邦でも関西を中心に、ベンチジンやナフチルアミンを取り扱った人で職業性膀胱がんの発生がみられます。

膀胱がんのタイプ

膀胱がんは、大きく3つのタイプに分類されます。頻度としては、膀胱がん全体の70~80%が表在性膀胱がんで、20~30%が浸潤性膀胱がんといわれています。

1. 表在性膀胱がん

悪性度が低く膀胱の内腔にカリフラワー状に発育しており、膀胱の壁には深く進まないタイプ。再発をくり返しやすいという特徴がありますが、生命にかかわることはほとんどありません。

2. 浸潤性膀胱がん

悪性度が高く早期にぼうこうの壁に深く浸潤するタイプです。進行が早く、早期にリンパ節や他の臓器に転移を起こしやすく問題となります。

3. 上皮内がん(CIS)

特殊なタイプとして上皮内がんがあります。表在性膀胱がんの患者さんのなかにも、浸潤性膀胱がんへ移行するものもあり注意が必要です。

症状について

初期症状として多くみられるのは血尿です。
顕微鏡でわかる程度の血尿のこともあり、必ずしも肉眼的なものではありません。
とくに腫瘍が大きくなってくると、頻尿、排尿痛、残尿感といったもののほか、尿路感染、尿管口の閉塞による腎機能の不全なども起こります。

1. こんな検査を行います

健康診断や人間ドックなどで指摘された顕微鏡的血尿(尿検査でわかる血尿)を示す患者さんでは、1次スクリーニングとして以下の検査をします。

1次スクリーニング検査
超音波検査(エコー) 尿細胞診断 膀胱鏡検査

2. 病気の状態(進行度)を決める検査を行います

これらの検査によって、病期を確定し、治療方針を決定します。

局所の広がりを見る目的の検査 膀胱鏡検査  CT検査  MRI検査
転移の検索のための検査 造胸部レントゲン  CT検査  シンチグラフィ
確定診断について

表在性がんか浸潤性がんかは、膀胱鏡検査である程度は予想ができますが、確定診断は、尿道から手術用の内視鏡をいれ腫瘍を削り取る手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術)によりおこないます。
削り取ったがん細胞を顕微鏡で調べ、がんの悪性度と膀胱の壁への深さ(進達度)を診断します。一般的に膀胱の筋肉の層(筋層)まで進んでいないものは表在がん、筋層まで進んでいるものは浸潤がんとみなされます。膀胱がんであっても、表在がんと浸潤がんでは、治療方法も生命予後も大きく違うので注意が必要となります。

3. 患者ごとに最適な治療法を検討します

経尿道的膀胱腫瘍切除術TUR-Bt
経尿道的膀胱腫瘍切除術TUR-Bt浸潤度の低い表在性の膀胱がんの場合にこの術式でがんを取りきることが可能です。
手術は、通常半身麻酔下に行います。方法は、尿道から膀胱に内視鏡を入れ膀胱内に発生した乳頭状の腫瘍を電気切除機器で取り除きます。 開腹手術よりも手術の負担が少なく術前の検査で全身上体が良好に保たれていれば、高齢者でも受けられる治療法です。
通常手術の翌日から、食事、歩行が可能です。入院期間も3~7日程度です。

術後の経過観察:表在性膀胱がんの特徴は、再発が多いことです。再発を早期に発見するために、定期的な膀胱鏡検査(2年間は3~4ヶ月毎)と尿細胞診断や尿検査が随時行なわれます。指示あるまで自己診断せずきちんと受診しましょう。
膀胱全摘除術
浸潤度が高くTUR-Btで不十分な場合にこの手術を行います。
膀胱腫瘍に対して、膀胱を摘出するだけでなく骨盤内のリンパ節も取り除く手術です。
男性では前立腺や精嚢腺も摘出します。女性の場合、尿道や子宮・膣の一部も同時に摘出する場合があります。また同時に尿路変更といって尿の通り道を作り直す必要があります。
膀胱部分切除術
腫瘍がせまい範囲の場合、膀胱の一部分のみを切除することがあります。術後、膀胱が小さくなりますが尿路変更は必要ありません。

4. 尿路変更とは?

膀胱は腎臓で作られた尿をためておく袋のようなものです。
手術で膀胱を取ってしまうと、膀胱の代わりをどこかでしてもらわなければなりません。
そこで、「尿路変更」という手術を並行して行い尿を貯めるところを新しく作る必要があり腸管の一部を利用して作ります。
「尿路変更」には主に4つの方法があります
それぞれの方法には利点と欠点があります。
体の状態などによってすべて希望通りの方法が選べるわけではありませんが、ある程度生活の状況に合わせて選ぶ事ができます。
そのため、これから4つの方法について説明します。それらを比べてより自分の生活スタイルにあった方法を選択して下さい。
尿管皮膚ろう
4つの方法の中で、一番手術方法が簡単で、短い時間ですみます。
尿管を直接おなかの皮膚に縫い合わせて、ストーマを作ります。手術の方法によって、ストーマが1つのものと2つのものがあります。尿管皮膚ろうのストーマは、約1センチほどで小さいものです。 尿をためることができないため、尿は体の外に絶えず流出します。そのため、カテーテルをストーマから腎臓まで入れておくか、尿を貯める袋(パウチ)をストーマの所につけるようになります。パウチは週1~2回程度交換します。

回腸導管
腸の一部を切り取って、その腸に尿管をつないで腸の一方を閉じ、もう片方をお腹に出します。ここから尿が出てくるようになります。これがストーマです。
回腸導管の場合は、尿が腸の動きによって絶えず体の外に流出されるので、ストーマに尿を貯める袋(パウチ)をつけます。パウチは週1~2回程度交換します。

自然排尿型代用膀胱
腸を使って、膀胱の変わりになる新しい袋をつくります。
その袋に尿管、尿道をつなぎなおします。見た目は手術前とあまり変らないのが、一番の利点は尿管皮膚ろうや回腸導管と異なり、ストーマをつける必要が無く、手術前と同様、尿道から排尿できることです。
これまでと同じように尿意を感じたり排尿をすることが出来ません。下腹部に張りを感じることで尿がたまったことを認知し、お腹に力を入れることで尿を排出します。 自尿がうまく出ず、尿が出しきれない場合は導尿といって、尿道から細い管を入れて尿を出すことが必要になります。また、尿失禁をともなうこともあり、失禁パットが必要になることもあります。 代用膀胱に使った腸から腸粘液の分泌が多い時は腸粘液で尿道がつまってしまう可能性があり、これを防ぐために尿道から管を入れて代用膀胱の洗浄が必要になることがあります。

膀胱炎とは

女性に多く、原因としては排尿の我慢しすぎ、冷えや疲れがきっかけとなることが多いようです。
排尿痛(特に排尿の終わりの痛み、違和感)、頻尿、尿の濁りが3大症状で、その他に残尿感、血尿などがあります。
診断は問診と尿検査にて行います。尿の採取法は排尿途中の中間尿で良いのですが、膀胱に関係のない陰部の炎症反応がまぎれると診断に支障をきたすため、特に初診時には導尿(管で尿を採取する方法)を行うのが良いとされています。
治療について
治療は抗生物質の内服と水分を多めに摂ることで症状は数日で改善します。
時に炎症反応が消失しても頻尿などの膀胱刺激症状が残ることがあり、そのような場合には炎症以外に問題がないか調べる必要がありますのでしばらく通院が必要です。

一度膀胱炎になったら癖になる、慢性化するのではと心配される方が多いのですが、そのようなことはありません。1年に1~2回患ったとしても、基本的に女性は膀胱炎になりやすいのでその時々で治療をすればよいでしょう。普段から水分を多く摂るようにすれば膀胱炎になりやすい方でもある程度の予防はできます。注意しなければならないことは、抗生物質の治療をしても症状ないしは炎症反応が改善しない、尿潜血反応あるいは血尿が出るなどです。そのような場合には尿路結石、膀胱機能異常、尿路通過障害や尿路腫瘍などの基礎疾患が見られることがありますので超音波検査、排泄性尿路造影あるいは膀胱内視鏡検査などを行う必要がありますので専門医に診てもらうことをお勧めします。

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お問い合わせ:042-649-1528

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