HIFU治療とは?HIFU

はじめに

早期前立腺癌(骨やリンパ節などに転移の認められない症例)の治療は、わが国では、前立腺を丸ごと摘出する根治的前立腺全摘出術と呼ばれる外科的開腹手術が最も多く行われています。しかし、開腹手術をすれば身体への負担が大きく、さらに術後の尿失禁や勃起機能障害などが高頻度に起こる可能性があります。そこで近年、こうした欠点を補うために3次元原体照射療法や強度変調放射線療法などの放射線療法をはじめ、放射線シードを前立腺に挿入する小線源療法、お腹に4~5個の1cm程の穴をあけて手術する腹腔鏡下手術、ロボット支援下腹腔鏡手術などが開発されました。それらの中で、患者さんにとって最も負担が軽い超音波による治療法、高密度焦点式超音波療法(HIFU、ハイフ)について紹介します。

前立腺癌の頻度と治療法

前立腺癌は、高齢男性に多い癌です。欧米では、男性がかかる癌のトップを占め、近年日本でも増加の一途をたどっています。ちなみに2015年の集計では、日本人男性においては、肺癌についで第2位となっています。
人口の高齢化や食生活の欧米化も影響していると見られていますが、血液の中のPSA(前立腺特異抗原)という腫瘍マーカーが普及し、血液検査で癌の存在が容易にわかるようになったことも患者増加の要因と言われています。
そのため、早期に発見される前立腺癌が増えてきましたが、これにはいろいろな治療法があります。

現在、前立腺癌が前立腺内にとどまる場合は、お腹を切って前立腺を丸ごと摘出する前立腺全摘出術が最も多く行われています。 癌を根治させる率は約80%とされていますが、手術時の出血とそれに伴う輸血や、手術後の尿失禁や勃起機能の障害などの合併症が起こる率が高くなります。さらに2~4週間にわたる入院が必要となります。
一方で、前立腺癌は進行が遅いものが多いため、70~75歳以上になると、積極的に開腹手術を勧められることは少なくなり、放射線治療やホルモン療法も多く行われています。放射線治療にも前立腺の外から放射線を照射する外照射の他、最近では前立腺内に直接放射性物質を埋め込む小線源療法も可能となりました。外照射の場合、治療中や治療後しばらくは排便痛や血便などの合併症が起こること、また稀に治療後長く経過してから直腸からの出血や尿漏れなどが起こる場合があります。また最近の小線源療法も会陰部から20本程、前立腺内に針を刺入しなければなりません。
ホルモン療法は、男性ホルモンによって成長する前立腺癌の性質を利用した方法で、ホルモンの動きを封じ込めるために女性ホルモンを投与する方法です。しかし2~3年でホルモン療法が効かない癌細胞が増えて、再び癌の増大が始まってしまいます。また、性機能は100パーセント失われ、女性の更年期障害のような症状が出現します。

このように、前立腺癌の治療は選択肢が多く、それぞれの治療法の欠点と長所を天秤にかけて治療法の選択が行われてきました。
ここに新しく登場したのが、強力超音波を用いて治療する高密度焦点式超音波(HIFU,ハイフ)療法です。これは、検査用超音波の数万倍という強力な超音波によって前立腺癌を熱凝固させて癌を死滅させる新しい方法です。身体への負担が少なく短期間の入院ですみ、重い合併症も少なく、前立腺全摘術に匹敵する効果が期待できることから大きな注目を集めています。

HIFUの歴史

HIFU療法は、強力な超音波を目的の部位に集中させ、焦点領域だけを80度から98度に加熱し、組織を熱凝固、壊死させることによって癌を治療する方法です。HIFU療法はもともと前立腺肥大症の治療に開発され、私たちも1993年から開始しました。
しかし、残念ながら前立腺肥大の治療にはもうひとつだったのです。前立腺肥大の場合、肥大した前立腺が尿道を圧迫しているので、前立腺を縮小させて尿道が通る空洞を作らなければならないのですが、実際にはできる空洞が小さく手術後1~3年でまた症状が再発してしまいました。しかし、これまで研究してきたHIFU療法を捨ててしまうのはもったいない。癌ならば、高い出力で空洞を作る必要もないし、超音波の熱で癌組織を壊死させることができるのではないかと考えたのが始まりです。
ただ、これにはネックがありました。HIFU療法では、肛門から直腸にプローブを挿入してここから前立腺に焦点を絞って超音波をあてます。しかし、このプローブが大きく、かつ治療時間が極めて長かったのです。初期の装置では、20グラムほどに肥大した前立腺を治療するのに6時間、大きいと9時間もかかりました。
しかしその後、プローブの小型化や治療時間の短縮化をはかり、1999年1月HIFUを使って前立腺癌の治療を開始しました。最初の2例は、80歳以上の高齢で手術の対象にはならない患者でした。この2人にHIFU療法を行って、1年間経過を慎重に観察しました。PSAには個人差がありますが、通常血液1ミリリットル中4ナノグラム(ng)以下なら正常とされます。2人の患者のPSA値は治療前には10ng/mlを越えていましたが、治療後には0.5ng/mlを切るほどになり、安定した状態が続き、かつ定期的な術後の前立腺生検でも陰性で、癌細胞が認められませんでした。7年を経過した現在、PSA値は0.4ng/mlと安定しています。 この結果に自信を得て、さらに装置の改良や照射法の工夫を進めました。

HIFU装置と原理

この装置は、超音波で前立腺を観察するモニターと出力を調整する本体、肛門に挿入するプローブ、プローブ内を還流する水を冷やす自動冷却装置からなっています。
肛門に挿入するプローブ自体も最大直径3.2センチに小型化されました。

このプローブは超音波による前立腺のモニターと治療の両方ができるようになっています。治療時間も前立腺の大きさが2.5グラムぐらいならば1時間半ぐらいで治療が終わるまでになりました。
治療は、まず背中から腰椎麻酔を行い下半身を麻酔した上で行われます。患者さんは麻酔後ベッドに仰向けになり、肛門から直腸にプローブが挿入されます。


テレビモニターで前立腺の状態を見ながら、治療する領域をセットして、スタートボタンを押せばコンピュータが自動的に治療を開始する仕組みです。

HIFUは、超音波が収束する焦点でのみ高温になるのが大きな特徴です。3×3×12ミリメートルの範囲が超音波の収束範囲で、この領域では組織が80度から98度に過熱されます。

しかし、焦点からわずか5ミリメートル離れただけで、温度は50度前後に低下するので、ねらいを定めれば周囲の組織を損傷することもありません。実際には、この焦点領域が少しずつ重なり合うようにコンピュータが自動的に超音波の焦点を移動させて、前立腺全体を治療し、癌組織を熱凝固させて死滅させます。前立腺癌は、早期であっても癌が前立腺内に散らばっていることが多いので、原則として前立腺全体をHIFUで照射します。

1つの焦点領域につき3秒間超音波を照射して3秒間休むという間隔で治療します。
前立腺全体を加熱するためには、通常これを300-1,500ヵ所で繰り返します。100度以上になると、組織内の水分が小さな泡になって蒸散するポップコーン現象が起ります。こうなると、HIFUは正確に焦点を結ぶことが出来なくなるので、出力を低下させるか、治療を一時的に中断して温度を低下させなければなりません。医師は、治療の間テレビモニター画面を凝視し、白い泡立ちになって現れるポップコーン現象を監視します。治療の最後に下腹部あるいは尿道に細い管(バルーンカテーテル)を挿入し、終了します。

HIFU治療他詳細は以下からご覧ください

お問い合わせ:042-649-1528

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